昨日はクリスマスでしたね。
メリークリスマス、という事である人に捧げた話を投下していきます
《課題と聖夜と優しさと》
『えー、まだ終わらないの?』
目の前のディスプレイに写ったのは不満と呆れの意を込めた声色で膨れ面をした友人の姿。予想と寸分違わぬその反応に思わず苦笑を漏らす。
「ごめん、終わったらすぐ行くから先に始めてて」
「あ、ちょ―」
それだけ告げ終わると、相手の返事も聞かずに通信を切った。
あのままでは彼女の愚痴から長電話に発展し作業どころじゃなくなるのが目に見えたからである。
視線を机へと戻せば、嫌でも視界に入った課題の山に自然とため息が出た。
12月25日、世間一般ではクリスマスと呼ばれる日にこうして1人研究所で課題に追われているのには訳があった。
丁度1週間程前、締切前日に運悪く風邪をひいて数日間寝込んでしまい、罰として元の倍はある追加課題を出されてしまったのだ。
ちなみにそれを渡されたのが3日前の事である。
昨日、今日と必死に取り組んだおかげで大分片付いてきたものの、後5、6枚程残っていた。
室内に設置された時計の表示は17:45、パーティーの開始が確か18:00だと聞いたから死ぬ気で頑張れば19:00までには何とか間に合うだろう。
「よし、頑張ろうっと」
小さく拳を握りしめ気合いを入れると、ペンを握っていた手を再び動かし始めた。
「―さん、―カさん、シュカさん、起きて」
「…ん、あれ、アルヴィン?何で此処に…」
どうやらいつの間にか寝むってしまったらしい
軽い揺れに目を開ければ、見慣れた同級生の姿。彼はミレイアと共にパーティー会場に居る筈なのに…何故?
「シュカさんがあんまりにも遅いからお迎え。なのにシュカさん寝ちゃってるんだもん、課題は終わったの?」
「え、嘘。もうこんな時間?!」
慌てて時計に目をやれば時刻は既に19:30。
幸い課題は既に仕上がっていたので、それを手に取り立ち上がる。
「ごめん、すぐ提出してくる」
「じゃあ俺は玄関で待ってるよ」
「ん、わかった」
アルヴィンと一旦別れて、向かうはナツメさんの研究室。数回ノックの後に返ってきた返事を合図に中に入る。
「あぁ、お前か。課題はそこに置いておけ」
入ってきた私を一瞥するもナツメさんは休める事なく手を動かす。
「はい、…というか凄いですね、この部屋」
大量に積み重なった本、乱雑におかれたファイル。感嘆にも似たコメントを漏らしながら床に落ちていたプリントを拾い上げる。書面に記された専門用語の羅列は見るだけで頭が痛くなりそうだ。
「人工生命体に関する報告以外にも色々貯まっていてな。年が明ける前には片付けておきたい」
「お疲れ様です、あまり無理はなさらないで下さいね」
「…それは俺の台詞だ、また体調を崩されても困る」一応、心配してくれたのだろうか。意外な言葉に思わず面食らってしまった。
「ありがとうございます、では私はこれで」
口元に浮かんだ小さな微笑と共に一礼をする。部屋から出る直前、私は思い出したかの様に振り返った。
「メリークリスマス、ナツメさん」
私はそのまま扉を閉め玄関で待つアルヴィンの元へと走る。
だから中でナツメさんがどんな顔をしてたかなんて知る由もなかった。
(シュカさん、見て雪だ)(わ、通りで寒いと思った)
(それじゃ、はい)
(…何、この手)
(手を繋いだ方が寒くないでしょ?)
(……流石、王子)